【公設の放課後児童クラブの運営状況の検証として市側が出してきた情報のレベルが残念だった】(2020年12月3日 教育福祉常任委員会)

 タイトルの通りです。

 「それで本当に検証したつもりなんですか?」という質問が各委員から投げかけられた、というのが、今回のブログの内容です。

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 12月定例議会 教育福祉常任委員会の一般報告として、こども育成部こども育成総務課から、「公設民営の逸見小学校放課後児童クラブ運営状況の検証について」と題して、説明資料が提出されました。

■本市の放課後児童クラブについておさらい

●本市の学童保育(放課後児童クラブ)は、71/72か所が民設民営

 そもそもこの「公設」民営の放課後児童クラブに関する話題は、本市の放課後児童クラブを巡る状況を振り返らなければわからないところが多いので、ちょっとおさらいします。

 放課後児童クラブ、通称「学童クラブ」とは、保護者が就労などにより昼間家にいない小学生が、利用料金を支払って放課後の時間に保育を受ける施設です。横須賀市における放課後の保育については、民間が一生懸命設立・運営に尽力してきた経緯があり、現在72か所中、実に71か所が、民設民営(保護者会や株式会社やNPOが設立・運営するスタイル)で、やっています。

 そして、ただ1か所だけある、「公設」民営の放課後児童クラブの運営状況に関する報告が、今回の件です。

●「公設」したのは、逸見が放課後児童クラブ空白地区だったのと、日本一利用料が高いと言われる横須賀市の放課後児童クラブの利用料に対する課題意識があったから

 この「公設」民営の放課後児童クラブは、2019(平成31)年4月1日に開所しました。「公設」した理由は主に2つありました:

①逸見小学校・沢山小学校(近接校です)は、小学校区内に放課後児童クラブが無かった。

②日本一利用料が高いと言われる横須賀市の放課後児童クラブの利用料に対する課題意識があった。

①については、読んでその通りで、市内では逸見・沢山・走水小学校の3校のみ、小学校区内に放課後児童クラブがありませんでした。これを受けて、2018(平成30)年3月定例議会において公設放課後児童クラブを逸見小学校に設置する費用(約2,200万円!)を含む予算案が上地市長から提出され、議会としてこれを可決し、設置に向かいました。

そして、今回の報告により密接にかかわる要素は、②です。

横須賀市の放課後児童クラブの利用料は、かなり高額なところが多いです。日本一高いと言われることもあるくらいです。2018(平成30)年度の本市放課後児童クラブ平均月額利用料は16,676円で、月額利用料が16,000円を超えていたクラブが全国でたった2.7%だったことを考えれば、うなづける表現です。(添付した画像は、2019年3月頃に私が市政報告をするときに使っていた資料です)

 こうした高い利用料が、何に起因するものなのか。公設し、運営した場合、その保育料は果たして下げられるのか? 設置してみて、これを分析・検証してみてはどうか?という上地市長の考えに基づき、設置されたというのが、「公設」民営の放課後児童クラブ誕生のもう一つの経緯です。

 当時の議会質疑にも、上地市長の姿勢が表れています:

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2018(平成30)年2月26日 3月定例議会 無所属みらい(※当時私が所属していた会派です。2019年の統一地方選後に解消し、よこすか未来会議におります) 代表質問

◆(小幡沙央里)
 続いて、公設の学童クラブについて、お伺いいたします。
 まず、確認させていただきたいのですけれども、今学童クラブが抱えている課題がたくさんあるというのは市長も認識を持っていることと思うのですが、先ほど市長が御答弁の中で、公設で運営をしてみて、それをモデルとして示していきたいとおっしゃっていたのは、公設で運営してきた運営費であったりとか、またそこで徴収するような利用料を、ぜひ民間の学童クラブも参考にしてくださいといった認識でよろしいですか。 
 利用料に関して、民間であれば学校内に入っていなければ自分たちで物件を借りて、またその更新料も払って運営していくことで、コストはかなりかかっていると思うのです。その分が利用料に少し反映されてしまっているというような話も伺っております。しかし、先ほどおっしゃった中では、公設をモデルにとおっしゃっていたのですが、このモデルにと言った意味をもう一度伺えればと思います。
◎市長(上地克明)
 御承知のとおり、本市は民設民営で、たくさんの民間の方々の尽力によってでき上がったということは事実です。一方で、費用が非常に高くて、皆さんが使いづらいと言っていることも事実。それはどうしたらいいかと、ずっと実は考えていました。これは、保護者に直接支給をするべきか、金銭的に補助を出すべきかどうかという1つの案がありました。でも、これは公平ではないのではないかと。これを使う人たちに直接支給をして、費用を少しでも安くさせるということに税金を投入するのはいかがなものかという結論に至りました。それで、私はそれを行うべきではないという話をしました。
 では、次に何をすればいいか考えたのです。それは今言ったようにモデルケースではなくて、公設で行った場合、何も費用を安くしろと言っているのではない。他都市では公設がたくさんあると思うのですが、一般論で言って公設でどのような費用負担、経費がかかるのかを調べてみたいということが、まず1点あるのです。
 御承知だと思うのですが、民設の学童クラブに学校へ入っていただいても、一向に費用が下がらないという実態があります。そうした場合、公共の施設で公設で行ったときにどういう費用負担で経費がかかるのかということをまず調べてみたいというふうに思っているのです。とするならば、その後の展開で負担が大きいといった方たちに対して何ができるか、まずはこういうふうにできるのではないですかということを考える上で、重要なモデルケースになるのではないかというふうに思っている。何も民設の民間の方々にそれを強請するつもりなどは全くありません。ただ、今、公設の学童クラブがないから、まずはそれを公設で試してみたい、そういう思いからです。

-----代表質問議事録引用ここまで-----

空白地区に設置することは、ニーズがあるのであれば、大切なことです。

高すぎる費用の構造を分析し、少しでも低廉かつ機能は充実したものにしようとする努力も、大切なことです。

で、検証をしたいということで始まったこの「公設」民営の放課後児童クラブ、設置から1年が経過したのち、出されたのが、今回の「検証をしました」報告です。

■今回の検証の、何が残念なのか

●そもそも、資料にみられる残念ポイントがたくさんありすぎる

 このあと、当日の質疑で明らかになった残念ポイントもご紹介しますが、そもそも資料を一読しただけで、これで検証っていうのか…?と思うような残念ポイントがたくさんありすぎます。

・コロナ禍なので関係者から聞き取り調査せず、書類だけで検証した

・定員35人に対し、登録児童数が年平均12人なのに、原因分析が書いてない

・「障害児の受け入れはありませんでした」と書いてあるが、障害児がいたのかどうかは書いてない

・そもそも、高すぎる利用料の検証のために始めた事業なのに、利用料分析は一切されていない

●そして、質疑で明らかになる、さらなる残念ポイント

▽竹岡委員

 当初の想定では35人の利用を想定していたが結果的に登録児童数が年平均12人だった。この背景としてはどのような理由が考えられるのか。

●こども育成総務課長

 9ページ(5)のとこにも書きましたが、開設前年度の平成30年度にニーズ調査を行いまして、57世帯がご希望いただきました。こちらの方といたしましても、35人定員そのくらい来ていただけるかなということを考えておったのですが、実際にスタートしてみるとまず一年目は利用者が少なかったということで、その理由までちょっと分からないとこなんですが、そこに通うという状況になったところで、例えばご親戚の方とかおじいちゃんおばあちゃんとか、そういったお宅が近くにあったりして、そこで放課後児童クラブを使わなくても済んだのかなというようなことは、ちょっと想像しております。

→私は教育福祉常任委員ではないので、後日中継を視聴しました。この時点ですでにだいぶ「おいおいどういうことなんだ???」という気分になります。

と、言うのも、ニーズ調査では大勢いたが、ふたを開けたら思ったほど来なかった、という事態に陥ることを危惧して、これまで質疑してきた経緯があったからです。

――――以下、過去の会議録より引用――――

2018(平成30)年 6月定例議会 教育福祉常任委員会  06月11日-06号

◆加藤ゆうすけ
 続いてこども育成部に幾つか質問したいと思います。公設の放課後児童クラブ設置に関するアンケートの調査の結果について幾つか伺いたいと思います。 説明資料の3ページの調査項目を拝見すると、さまざま項目はあるのですが、幾らだったら利用したい、あるいは幾らだったら利用できるというのは把握していらっしゃいますか。
◎教育・保育支援課長(※当時の所管課)   そちらにつきましては、今回の調査項目からなのですが、公設の学童クラブを設置するに当たりまして、ニーズがあるかどうかの実態把握を中心として行っております。運営経費が幾らかかって、負担として幾らが適切か、利用料につきましては今後決めていきますので、今回具体的な利用料金などの希望は調査項目に入れていない状況でございます。
◆加藤ゆうすけ
 今回公設というところで、価格に関しては、もしかしたら安くなるのではないかという期待を込めて回答されている方もいらっしゃると思うのです。希望を聞かないままに価格が決まっていった後に、公設だけど、安くならないのだったら入らないとなる可能性は考えなかったのでしょうか
◎教育・保育支援課長   先ほどの回答と同様の形になってしまいますが、今回は利用を希望するかどうかという形で、最大の数字となっているかと思っております。その中で利用料金が高ければ利用しないといった考え方をする方もおられるかもしれませんが、運営経費が幾らかかり、負担が幾らかかって、適正に公設で行う上で金額設定していきたいと思っておりますので、このような形にさせていただきました。
◆加藤ゆうすけ委員   調査結果の29ページでも、就労しているが、利用料が高いから使っていないというお答えをされている方もいらっしゃいますので、ぜひ今後、慎重に御希望を伺う際には、利用料等も含めて御意向を把握されれば、より確かなものになるのではないかと感じております

――――過去の会議録の引用ここまで――――

 市は、2018年5月11日から22日にかけて、放課後児童クラブの未設置小学校区3校(逸見小学校・沢山小学校・走水小学校)の保護者にアンケートを実施し、設置ニーズ調査を行っていました。上記の会議録は、このニーズ調査結果報告を受けて行ったものなのですが、このニーズ調査の時、「いくらだったら利用しますか?」と、聞いてなかったのです。そして今のこの結果に至り、この検証報告があがってきて、あぜんとしている、という流れです。

 残念ポイントが続きます。

▽竹岡委員

 そうすると、当初想定の約半数(の登録者)ということになるかと思います。やはりこの現状をしっかりと検証分析をして頂いて改善する必要があると感じるんですけども、その中で今回アンケートを取っていただいたということでした。で、このアンケートの調査項目の内容っていうのは、どのような議論を経てこのような形になったのか教えていただけますでしょうか。

●こども育成総務課長

 アンケートにつきましては事業者の方で実施してございまして、市で実施したアンケートではございません。現状の満足ですとか、保護者の方がどのように思ってましたかってことを把握するという趣旨で実施したものでございます。

→「市が検証する」と言っていたものに対して、「事業者がつくって、実施したアンケートです」という答えが返ってくるとは、本当にあぜんとしました。

 厳しい言い方になりますが、放課後児童クラブは、放課後児童健全育成事業として市が責任を負うことと、法律で定められているものの一つです。この状況では、当事者意識のかけらもないのではないか?と思わざるを得ません。かつて私が、放課後児童クラブを巡る問題を指摘したときの記憶が頭をよぎりました。

この竹岡委員の質疑の後に、各委員が質疑を続けましたが、

・定員に対して利用者が少ないが、かつてアンケートで「通わせたい」と回答した人にアプローチするなどの努力はしていなかった

・この事業に一般財源(要するに市が皆さんからいただいた税です)から648万2千円支出されているので、利用者数(平均毎月7.6人×12ヶ月=91.2人)で割ると、一人ひと月7万2千円もかかっていることになる

・公設「民営」なので、運営は民間委託しているが、通う児童の募集は市の業務となっていたので、児童が集まらずとも委託された民間事業者は責任を感じる仕組みになっていない

など、次々と残念ポイントが明らかになっていきました。「何も原因を調査してなくてさ、現場入ってなくて、利用者さんの声も聞いてなくて、それで見直しなんかできやしないよ。だからやめなよ。検証した結果、我々には管理業務の責任は全うできませんからやめますって、言えばいいじゃん。」という指摘まで、ありました。

■現時点で我々にできることは、検証を求め続けること

 以上のように、今回の検証は、到底検証といえる代物ではないと思っています。逸見・沢山の現に通所する児童が困っては元も子もありませんので、とにかく、当初の目的の一つ【高すぎる市内放課後児童クラブの保育料をなんとか下げられないか検証する】に資する事業となるよう、議会側から質疑、意見していきたいと思います。

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